家族信託。ケースバイケースの設計を考える!~その2

家族信託。ケースバイケースの設計を考える!~その2

本稿では、「その1」につづき以下のスキームについてご紹介します。
⑤先代から承継し兄弟で共有している不動産を一括処分する信託
⑥再婚者の生活支援と前妻の子への資産承継を目的にした資産処分型信託
⑦後継者にスムーズに事業を託す事業承継型家族信託(1)
後継者にスムーズに事業を託す事業承継型家族信託(2)

⑤先代から承継し兄弟で共有している不動産を一括処分する信託
 
(目的)先代から承継した地方都市の居宅に長女が居住。当該居宅は、長
  女の兄弟4人との共有となっている。兄弟それぞれが高齢化しているこ
  と、長女亡き後は誰も承継取得する意思はないことを勘案すると、いず
  れ空き家化し、共有者も将来的に増加する可能性がある。長女逝去の
  タイミングで売却処分し、居宅の負動産化を防ぐ。この管理処分権を長
  女の息子に集約し託す(一元管理で手続きの煩雑さも回避できる)。

 (関係当事者とスキーム設計)
   <関係当事者>委託者兼当初受益者(長女・長男・二男・二女・三
       女)・
受託者(長女の息子)・信託財産の最終的な帰属者
       (長女の息子および長女を除く当初受益者、もしくはその相
        続人) 

   <信託財産>~預貯金と居宅
   <信託の終了>長女の死亡と居宅の売却完了をもって終了

⑥再婚者の生活支援と前妻の子への資産承継を目的にした資産処分型信託
 
(目的)自分(夫)亡き後の後妻の生活を所有の自宅で安定させる。前妻
    の子(長男)
に対しては、後妻死亡後に自宅等遺産の取得をさせる
    形にして争族を
起こさせず、加えて姻族への相続財産の分散を回避
    する。長男を自宅を管理する者として受託者に指定する。配偶者居
    住権の代替的措置。

 (関係当事者とスキーム設計)
   <関係当事者>夫(委託者兼当初受益者)、後妻(第2受益者)、前
    妻の子(長男、受託者)、信託財産の最終帰属先(長男)

   <信託財産>~預貯金と自宅
   <信託の終了>後妻の死亡をもって終了

⑦後継者にスムーズに事業を託す事業承継型家族信託(1)
 (目的)中小企業の経営者として次期経営者(後継者)は二男と決めてい
   る。自身の健康上の理由で経営が困難になったときに備えて、保有す
   る自社株式の管理は、二男を受託者として任せる。健康時は、自社株
   式の議決権行使は、委託者兼当初受益者である現経営者が行い経営権
    は当面保持するが(議決権行使指図権者となる)、認知症等健康悪化
   時はその権利を二男に移転し、
経営継続に支障が出ないようにする。
   現経営者死亡後は、当該株式を
二男に取得させ、事業承継を完了す
   る。

 (関係当事者とスキーム設計)
   <関係当事者>現経営者(委託者兼当初受益者)、受託者(二男)
       信託財産の最終帰属先は二男
   <信託財産>自社株式
   <信託の終了>現経営者の死亡をもって終了
後継者にスムーズに事業を託す事業承継型家族信託(2)
 (目的)中小企業の現経営者から次期経営者(長男)に自社株式の評価額
   が低いうちに自社株式を信託し、その受益権を長男に移転する(実質
   的な生前贈与)。現経営者は委託者兼受託者(自己信託形態)とし
   て、健常な間は議決権行使を行い経営権を掌握しておく。
   自身の健康悪化時(認知症発症等)もしくは死亡時を信託終了時期と
   し、長男に完全に経営権を移転、取得させる。

 (関係当事者とスキーム設計)
   <関係当事者>現経営者(委託者兼受託者)、受益者(長男)
       信託財産の最終帰属先は長男
   <信託財産>自社株式
   <信託の終了>現経営者の健康悪化もしくは死亡をもって終了

以上、家族信託の基本的な設計(スキーム)をいくつかご紹介しました。家族信託は、それを検討する皆様のニーズや事情に合わせ、この他にも様々設計が可能です。ただし、信託契約期間中に内容の変更を余儀なくされる事態が発生しても対応できる当初契約内容にしておく等、工夫も必要です。専門家のアドバイスを受けながら、活用をすすめるべきものと考えます。

当事務所は専門家として、家族信託のご相談に丁寧に対応いたします。お気軽にご相談ください。
                     (2024年3月:文責 小山田真)